Dockerとは?導入メリットと従来の仮想化との違い、運用ポイント、Kubernetesとの関係についても初心者にも分かりやすく解説

Dockerとはアプリケーションの作成、デプロイ、および実行を容易にするために作成されたオープンソースのソフトウェアです。コンテナ仮想化を用いており、非常に軽量で起動や処理が高速という特徴があります。

2021年にIDC Japanが実施したコンテナとKubernetesの導入状況に関する調査結果を見ると、本番環境で使用している企業は16.9%でした。2020年調査時から4.7ポイントの上昇となり、本格的な普及期に入ってきたと言えます。本記事では、Dockerの概要から導入手順、メリット、デメリット、運用ポイントなどをご紹介します。

Dockerとは

Dockerは、ハイパーバイザー型の仮想技術とは異なり、アプリケーションの実行環境はゲストOS上ではなく、Dockerが提供する「コンテナ」上に存在します。

このコンテナは、アプリケーションの展開に必要なライブラリやミドルウェアを含んでおり、開発環境で作成したコンテナをそのまま本番環境で使うことができます。その結果、開発環境でテストされたアプリケーションは本番環境でも同じように動作することが保証され、アプリケーションの展開や更新が容易になります。

コンテナについて詳しくはこちらの記事もご参照ください。

さらに、Dockerは各環境を機能や役割ごとに分離して利用できるため、DevOpsやマイクロサービスとの相性が良く、迅速なアプリケーションの展開やスケールアップ・ダウンが可能です。また、テストやデバッグのために分離された複数のコンテナでアプリケーションを実行することで、セキュリティが向上し、作業が簡素化されます。これらの特性により、Dockerはアプリケーションの開発からデプロイ、保守までの各フェーズで迅速かつ容易な管理を実現します。

Dockerの特徴と従来の仮想化(ハイパーバイザー型)との違い

リソースの有効活用が可能

Dockerは、ホストOSのカーネルを共有するコンテナ型仮想化技術を使用しています。これにより、ハイパーバイザーが不要となり、リソースの有効活用が可能です。従来の仮想化では、アプリケーションの数だけゲストOSを起動する必要がありましたが、Dockerでは、多数のアプリケーションを同じOS上で動作させることができます。これにより、OSのリソースに直接アクセスし、リソースを効率的に使用することが可能です。

起動時間の短縮

Dockerは起動時間が非常に短いことが特徴です。従来の仮想化技術(ハイパーバイザー型)では、アプリケーションの構成によっては複数のゲストOSを起動する必要がありました。しかし、Dockerでは、一つのホストOS上で複数のコンテナを起動することができます。これらのコンテナは軽量であるため、起動時間が大幅に短縮されます。

DockerとKubernetesの関係

DockerとKubernetesはDevOpsとクラウドソリューションを実現するために広く利用されている2つのソリューションです。Dockerは「アプリケーションコンテナプラットフォーム」であり、標準化されたコンポーネントを使用してアプリケーションを迅速に作成・展開することが可能です。

一方、Kubernetesは2014年にGoogleが開発しリリースした、コンテナ化されたアプリケーションやサービスを論理的に統合管理するツール(オーケストレーションツール)です。

KubernetesはGoogleの大規模な本番ワークロードの実行経験を基に構築されており、ローリングアップデート、ロールバック、リソース使用率の追跡、オートスケールなどの運用・デプロイ機能を提供します。DockerとKubernetesの両方を組み合わせることで、アプリケーションのデプロイと管理のためのフレームワークを提供し、本番環境におけるスピード、スケーラビリティ、再現性の高いワークロードを実現することが可能です。

Kubernetesのようなオーケストレーションツールは、Dockerの運用時の管理を容易にして自動化するために重要であり、運用の状態をリアルタイムに可視化することができます。この可視性により、プロアクティブなトラブルシューティング、コンテナの追加や削除による必要時の自動スケール、組織全体での複雑なデプロイの自動化が可能になります。さらに、オーケストレーションツールはリソースの利用状況の監視、さまざまな環境での分散アプリケーションの実行、およびアプリケーションの高可用性の確保に非常に有用です。

そして、メンテナンスをより簡単かつ迅速に行うことができます。需要に応じたアプリケーションの自動スケーリングが可能になるなど、インフラストラクチャのコストを削減し、より迅速なサービス提供を実現できます。

Kubernetesについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

「Kubernetesとは?基本概念をわかりやすく解説!使い方やメリットもご紹介」

Dockerの構成要素

ここまでDockerについてご説明してきましたが、Dockerを構成する各要素についても見ていきましょう。

Dockerイメージ

Dockerイメージは、アプリケーションの実行に必要なファイル、ライブラリ、設定ファイルの集合体で、これを用いてDockerコンテナを作成します。これらの要素はDockerfileというテキストファイルで定義され、このDockerfileを利用することで、複数のマシンに対して同一の環境を容易に構築することが可能です。

Dockerコンテナ

Dockerコンテナは、アプリケーションの実行環境を提供するもので、Dockerシステムを構築する上で最も重要な要素です。各コンテナは独立して動作し、ライブラリやスクリプト、実行ファイルなどを含むことで、アプリケーションの迅速かつ容易な展開が可能となります。また、コンテナは基盤となるシステムから独立して動作するため、どのプラットフォームでアプリケーションが実行されているかにかかわらず、その移植性と安全性を保つことが可能です。

Dockerデーモン

Dockerデーモン(しばしば「Dockerサーバー」とも呼ばれます)は、異なるコンテナとその関連リソースを管理する役割を担っています。これはコンテナ化されたすべてのアプリケーションの中心的なハブとして機能し、ユーザーは各アプリケーションに関連するリソースを作成、デプロイ、および管理することが可能です。

Dockerクライアント

Dockerクライアントは、コマンドラインインタフェース(CLI)であり、これを用いてDockerデーモンと対話します。管理者や開発者向けの多数のコマンドを使用することができ、例えばイメージの作成や取得、Dockerネットワークの管理などが可能です。また、Docker Hubやその他のオンラインリポジトリに接続してイメージを取得したりプッシュしたりすることも可能です。

Docker Hub

Docker Hubはクラウドベースのレジストリサービスであり、ユーザーが自身のDockerイメージを保管・配布するために使用します。ユーザーは自身のアプリケーションやソリューションを共有したり拡張したりし、必要に応じてそれらを取り出すことが可能です。また、統合CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)プラットフォームも提供しており、Amazon Web Services(AWS)やその他の互換性のあるクラウド環境でDockerコンテナのテストとデプロイを容易に行うことができます。

Dockerを利用するメリット

環境の一貫性と再現性

一番大きなメリットの一つは、環境の一貫性と再現性を保つことができる点です。開発環境と本番環境で同じコンテナを使うことで、アプリケーションが開発から本番環境へ移行しても問題なく動作することが保証されます。これにより、開発者と運用チームとの間で発生する環境の違いによる問題を最小限に抑えることができます。

ポータビリティと拡張性

Dockerは、コンテナ化されたアプリケーションを他の環境でも動かすことができるため、アプリケーションのポータビリティが高まります。また、コンテナは軽量かつスケーラブルであり、必要に応じて簡単に増減させることができます。これにより、アプリケーションの拡張やスケーリングが迅速に行えるため、急なトラフィックの増加などの状況にも対応しやすくなります。

リソースの最適化

Dockerは、ホストシステムを共有する仮想化技術を利用しており、このためリソースの効率的な利用が可能です。従来の仮想化に比べてコンテナは軽量で、起動や停止が速く、システムのオーバーヘッドが少ないため、ハードウェア資源の節約に寄与します。これにより、同じホスト上で多くのコンテナを稼働させることができ、コストの削減やサーバーの効率化が実現できます。

Dockerを利用する時の注意点

Docker利用にはさまざまなメリットがある一方、注意点も存在します。ここで、いくつかご紹介しましょう。

セキュリティ

Dockerコンテナは、ホストOSのカーネルを共有するため、コンテナ内からカーネルに対する攻撃が可能となるリスクがあります。また、Dockerイメージは誰でも作成・公開することができるため、不正なソフトウェアを含むイメージを使用する可能性もあります。そのため、信頼できるソースからイメージを取得し、最新のセキュリティパッチを適用するなどの対策が必要です。

データの永続化

Dockerコンテナは不変であり、コンテナ内のデータはコンテナが削除されると同時に消失します。そのため、データの永続性を確保するためには、データボリュームを使用するなどの対策が必要です。

設定項目が多く複雑になりがちである

Dockerは非常に柔軟性が高い一方で、ネットワークやストレージ、ログ管理など、設定項目も多く複雑です。そのため、Dockerを効果的に使用するためには、これらの設定項目を理解し、適切に設定する必要があります。

Dockerの運用ポイント

セキュリティの確保

Dockerコンテナを運用する場合、ホストOSや他のコンテナへの攻撃を防ぐために、適切なセキュリティ対策が必要です。例えば、Dockerコンテナを別々のユーザーで実行することで、コンテナ間の隔離を強化することができます。また、Dockerイメージを定期的に更新することや、不要なDockerコンテナを削除することも、セキュリティ確保のために重要です。

リソースの効率的な利用

Dockerコンテナは、ホストOSのカーネルを共有して実行されるため、従来の仮想化技術に比べてリソースの利用効率が高くなります。しかし、複数のDockerコンテナを運用する場合には、リソースの配分に注意する必要があります。特に、メモリやCPUを多く消費するアプリケーションを複数のコンテナで運用する場合には、リソースの配分を適切に行うことが必要です。

ログの収集・管理

Dockerコンテナのログは、コンテナ内で発生したものと、Dockerデーモンが出力するものの2種類があります。これらのログを収集し、分析することで、アプリケーションのトラブルシューティングや障害発生時の原因特定が容易になります。そのため、Dockerコンテナのログを収集し、適切に管理することが重要です。

監視・運用管理

Dockerコンテナを運用する場合には、コンテナの監視や運用管理が必要です。例えば、コンテナの稼働状況やリソースの利用状況を定期的に監視し、障害発生時には適切な対応を行う必要があります。また、Dockerコンテナを自動化した運用環境にする場合には、運用スクリプトやツールの作成や運用監視の自動化が必要となります。

コンテナのログ管理や監視に関しての詳細はこちらの記事もご参照ください。

まとめ

Dockerを利用すれば、アプリケーションの開発を容易にする環境が構築できます。ただし、そのためにはコンテナやKubernetesの概念、機能、運用を十分に理解しておくことが必要です。Dockerとコンテナ、さらに効率的に運用するためのKubernetesなどの関連技術を理解することで、信頼性が高く効率的な方法でアプリケーションの開発とデプロイを行えます。そして、リソースの効果的な活用やアプリケーションのパフォーマンスの向上も見込めます。

しかし、従来の仮想化技術と比較して、Docker、コンテナやKubernetesは新しいソフトウェアおよび技術であるため、これまでと同じ運用ではなく、環境に合わせて運用を変えていく必要があります。各ソフトウェアや技術はこれから先もさらに進化していくことが予想されるため、今すぐに利用する予定はなくても、事前に情報収集しておけば、いざ利用する際にスムーズかもしれません。

[筆者プロフィール]

おじかの しげ
https://twitter.com/shige_it_coach

東京近郊の中堅SIerに20年勤務する、インフラ系システムエンジニア。インフラ環境構築からOS、ミドル導入、構築、運用。最近はインフラ関係だけではなく、WEBアプリ開発など幅広く業務を経験。

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