Microsoft 認定資格プログラム (MCP): システムエンジニアのスキル証明を取得しよう

はじめに

Microsoft Azure はクラウドコンピューティングの世界で急速に成長しており、IT業界におけるキャリアの成長と発展に不可欠なスキルを提供しています。システムエンジニアにとって、Microsoft Azureの知識とスキルは非常に価値のあるものです。そして、その道を切り開くための最良の方法は、Microsoft 認定資格プログラム(MCP)の受験です。

この記事では、Microsoft Azureに興味を持つシステムエンジニア向けに、MCPの受験を勧め、その取得方法と合格メリットを解説します。さらに、教材として無料で提供されているリソースも紹介しますので、ぜひ活用してみてください。

※IT 用語と概念に関する基本的な知識はお持ちの前提です(目安:IPA ITパスポート試験合格相当)。

MCPとは何か?

MCPは、Microsoftの認定資格プログラムであり、Microsoft 製品やテクノロジに関するスキルと知識を証明するための一連の資格です。Microsoft Azureに関連する資格は、クラウドコンピューティングにおけるスキルを証明するための優れた方法です。MCP資格は、MicrosoftのクラウドサービスであるAzureに関するスキルを評価し、証明するための道を提供します。

なぜMCP資格を受験すべきか?

  1. キャリアの成長: MCP資格は、キャリアの成長に不可欠です。Microsoft Azureのスキルと資格を持っていると、雇用(転職)機会が増え、キャリアの発展が期待できます。企業は、Azureスペシャリストを求めており、それに対応する資格を持っている候補者は大変魅力的です。
  2. スキル向上: MCP資格を受験することで、Microsoft Azureに関する深い知識とスキルを習得できます。これにより、クラウドコンピューティング、インフラストラクチャ管理、セキュリティなど、多くの技術領域で優れたスキルを磨くことができます。
  3. 信頼性と信用性: MCP資格は、あなたのスキルと知識を独立した第三者機関であるMicrosoft(試験実施団体は Pearson Vue / ピアソンビュー)によって正式に認定されたものです。これにより、雇用主やクライアントに対して信頼性と信用性を示すことができます。また、我が国の教育訓練給付制度の対象資格となっており労働者のキャリア形成に一定の水準があるものと認識されています。

※補足1:認定資格の取得によるメリットに関するエビデンス:
https://www.microsoft.com/ja-jp/partner/contents/mcp

  • 技術専門家の 67% が仕事で実行する能力に対して自信を持てるようになったと回答しています。
  • 41% が仕事の満足度の向上を報告しています。
  • 35% の給与または賃金が増加したと回答しています。
  • 認定を受けた IT プロフェッショナルは、認定資格は彼らにより専門的な信頼性を与えると言います。※2018 Pearson VUE Value of IT Certification より
  • 53% の認定を受けた IT プロフェッショナルは、自社の専門知識が組織内でより求められていると言います。※ Global Knowledge 2019 の IT スキルと給与レポートより
  • 93%の意思決定者は、認定された従業員が付加価値を提供することに同意します。※ Global Knowledge 2019 IT Decision Makers Insights より

※補足2:厚生労働省:雇用・労働「教育訓練給付制度」対象にもなっています。
制度:教育訓練給付制度とは、働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html

分野・資格コード表:
https://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/kyouiku/dl/03f.pdf
(1)②OA機器操作関係, コードI:450, コードⅡ:10900, 資格・試験名: MCA・MCP(マイクロソフト認定資格), 試験機関(又は所管省庁):マイクロソフト認定プログラム事務局

MCP資格の取得方法

では、MCP資格を取得するためのステップを簡単に紹介しましょう。特に、Microsoft Learn( https://learn.microsoft.com/ja-jp/ )という無料の教材リソースを活用して、資格を取得する方法を紹介します。

学習と受験のために Microsoft アカウントを取得しましょう。職場や学校のメールアドレスを使用してもいいのですが、個人のプライベートアカウントで Microsoft アカウントの使用をおススメいたします。理由は転職や卒業などでメールアドレスを一生使用し続けることは少ないと考えるためです(後から変更もできますが、個別にマイクロソフトへ申し出が必要です)。

ステップ1: Microsoft Learnを訪れる
Microsoft Learnは、Microsoftが提供する無料のオンライン学習プラットフォームです。ここで、Azureに関するさまざまなトピックについて学び、スキルを向上させることができます。アカウントを作成し、興味を持つトピックを選択しましょう。

ステップ2: 学習リソースを活用する
Microsoft Learnには、ビデオチュートリアル、ドキュメント、クイックスタートガイドなど、さまざまな形式の学習リソースが用意されています。自分だけの学習スタイルに合ったリソースを選んで学びましょう。著者は試験シラバスを確認して範囲を絞って学習する合理的なスタイルを好みます。

ステップ3: ハンズオンラボ(サンドボックス)
Microsoft Learnでは、Azureを実際に使ってハンズオンラボを行うこともできます。実際の操作を通じてスキルを向上させる絶好の機会です。

ステップ4: 試験の準備
MCP資格を取得するためには、試験に合格する必要があります。試験の内容やフォーマットについて学習リソースを活用し、模擬試験を受けて実力を確認しましょう。

ステップ5: 試験の申し込みと合格
試験に合格すると、MCP資格を取得することができます。試験はオンラインまたは試験センターで受験できます。合格すれば、資格証明書が送付され、あなたのスキルを証明することができます。

ディジタルバッジとして資格証明
Credly (クレドリー)による資格証明例
Microsoft Certified: Azure Solutions Architect Expert (取得年月日および有効期限日)
https://www.credly.com/badges/6c71e995-5d7c-49d8-9325-77c6742cfb24

MCP資格の合格メリット

MCP資格を取得することによって得られる合格メリットを説明しましょう。

  1. 新しい仕事のチャンス: MCP資格を持つことで、新しい仕事のチャンスが広がります。Azureスキルを持っている人材は非常に需要が高く、さまざまな企業が彼らを探しています。
  2. 給与の向上: MCP資格を持つことで、給与が向上する可能性があります。Azureに関するスキルを持っているシステムエンジニアは、市場価値が高いため、給与交渉で優位に立つことができます。
  3. 自己成長: MCP資格の取得は、自己成長にもつながります。新しいスキルを習得し、プロフェッショナルとしての自己効力感を高めることができます。他社クラウドのスキル獲得にもスムーズな横展開ができ、結果として大規模な案件を任されるなど成長を実感できる機会が増えます。
  4. 信頼性と信用性: MCP資格は、あなたのスキルと信用性を証明するものです。これにより、クライアントや雇用主からの信頼を得やすくなります。

実際のMCPの受験例をもとに説明

ここでは、「AZ-900 Microsoft Azure の基礎」を例に説明します。
試験概要:https://learn.microsoft.com/ja-jp/certifications/exams/az-900/

この試験の受験者は、クラウドの概念全般、特に Microsoft Azure に関する基本的な知識の実証を望むテクノロジの専門家です。 この試験は、Azure のキャリアに向けた一般的な出発点です(基礎資格のため認定更新はありません)。

次のような Azure アーキテクチャ コンポーネントと Azure サービスについて説明できます。
・Compute
・ネットワーク
・ストレージ
また、Azure をセキュリティで保護、制御、管理するための機能とツールについても説明できます。

次のような IT 分野でのスキルと経験が必要です。
・インフラストラクチャの管理
・データベースの管理
・ソフトウェア開発

著者補足:IT分野のスキルを今はお持ちではなく未経験でも間違いなく合格できます。
そのための学習方法(受験テクニック)をご紹介いたします。

AZ-900 受験学習例

(この受験学習テクニックは他の試験科目や他社認定試験でも使用可能です)

1.試験の準備に役立つ AZ-900 学習ガイドを入手します

Study guide for Exam AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals | Microsoft Learn(※試験シラバスと同じものです)
学習ガイドは概ね四半期に一度見直されます。本記事の公開時点で学習ガイドは2023年7月31日時点の内容に基づいて評価されるスキルとなっており、最近発表された新しいテクノロジー等は含まれないことが判明します。

補足: Microsoft Cloud Partner Program へご参加のパートナー様だけにご活用いただける mstep トレーニング プログラムがあります。こちらはオンライン、オフライン(集合研修型)ともに無償で学習できます。参考:https://partner.microsoft.com/ja-jp/training/mstep-mcp

もしも、勤務先がパートナー資格を保有していない場合は弊社を経由してパートナー登録を行うことが可能です。詳しくはこちらをご確認ください。

2.AZ-900 学習ガイドから試験シラバス(出題対象)を確認します

全体として3部構成です。
・クラウドの概念について説明する (25–30%)
・Azure のアーキテクチャとサービスについて説明する (35–40%)
・Azure の管理とガバナンスについて説明する (30–35%)

3.中項目を確認します

例として「クラウドの概念について説明する (25–30%)」を取り上げます。
〇〇について説明する3つの中項目があり、計15項目からなる小項目があります。

クラウド コンピューティングについて説明する 7項目
・クラウド コンピューティングを定義する
・共同責任モデルについて説明する
・パブリック、プライベート、ハイブリッドなど、クラウド モデルを定義する
・それぞれのクラウド モデルに適したユース ケースを識別する
・従量課金ベース モデルについて説明する
・クラウドの価格モデルを比較する
・サーバーレスを説明する

クラウド サービスを使用する利点について説明する 4項目
・クラウドでの高可用性とスケーラビリティの利点について説明する
・クラウドの信頼性と予測可能性の利点について説明する
・クラウドでのセキュリティとガバナンスの利点について説明する
・クラウドでの管理の容易さの利点について説明する

クラウド サービスの種類について説明する 4項目
・サービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS) について説明する
・サービスとしてのプラットフォーム (PaaS) について説明する
・サービスとしてのソフトウェア (SaaS) について説明する
・それぞれのクラウド サービス (IaaS、PaaS、SaaS) に適しているユース ケースを識別する。

ご覧になられている通り、ここまで技術的な話題はありません。

4.Microsoft Learn ラーニングパスを確認し、学習を開始します

学習モジュール総数10:学習時間(目安)6時間半程度。
※「クラウドの概念について説明する (25–30%)」に限定

Microsoft Azure の基礎: クラウドの概念について説明する
https://learn.microsoft.com/ja-jp/training/paths/microsoft-azure-fundamentals-describe-cloud-concepts/
学習モジュール数3:52分

Microsoft Azure の基礎: Azure のアーキテクチャとサービスについて説明する
https://learn.microsoft.com/ja-jp/training/paths/azure-fundamentals-describe-azure-architecture-services/
学習モジュール数4:3時間25分

Microsoft Azure の基礎: Azure の管理とガバナンスについての説明
https://learn.microsoft.com/ja-jp/training/paths/describe-azure-management-governance/
学習モジュール数4:1時間52分

5.無料のプラクティス評価を受験
https://learn.microsoft.com/ja-jp/certifications/exams/az-900/practice/assessment?assessment-type=practice&assessmentId=23

ここでは試験監督がいませんので自由に間違えても無問題です。初回は回答毎に「次へ」ではなく「回答を確認」をクリックすると、回答説明を得られるので是非ご利用ください。

出題は英語のため、日本語ご希望時は Web ブラウザ(Microsoft Edge ブラウザを例)右クリックから「日本語に翻訳機能」をお使いください。

実際の試験さながらの練習ができます。このプラクティス評価から本試験で出題されませんが、試験の出題傾向をイメージできるでしょう。

6.受験準備
AZ-900 であれば Microsoft Learn だけで合格できるスキルが身に付きますが、どうしてもご不安であれば市販テキストを購入して学習(どのみちテキスト内容の深堀り答え合わせに Microsoft Learn を使用するので同じこと)しても良いでしょう。

(「予想問題集」と称しているもの出所不詳な海外サイトがもとになっているものが多く、深堀りや答え合わせをしていないだけではなく、とても古い出題内容を機械翻訳したものが大半で、最新の学習ガイド(試験シラバス)に準拠していないものが多いため、受験準備としては推薦致しかねます。)

7.受験申込
試験 AZ-900: Microsoft Azure の基礎 https://learn.microsoft.com/ja-jp/certifications/exams/az-900/

中段に「試験のスケジュール設定」があり、ここから Peason VUE (ピアソンビュー)または、Certiport(サーティポート)を選んで受験申し込みを行います。2023年9月18日現在、受験料金は 12,500円です。受験に際してクレジットカード決済を行うか、事前に受験バウチャー(受験チケット)コードを保有していることが必要です。

受験はテストセンター受験とオンライン試験の2種類があります。完全に密室の場所を用意でき、かつ、床や壁を撮影しても無問題の環境であればオンライン受験ができます。ただし受験中に頭髪や背中を掻きたくなる方はカンニングを疑われることもあるので、不安ならばテストセンター受験をおススメいたします。なお、テストセンターへは受験予定時間の30分前に到着しておけば概ね受付から受験時の説明を受ける時間を含めて大丈夫でしょう。受験時の本人確認書は何が必要なのかは受験申込時に送付されるメールをご確認ください。

8.受験後
すぐに結果が判明します。画面上に合格/不合格のいずれかが表示されます。惜しくも不合格だった方は再受験の申し込みをしたいと思いますが、再受験ポリシーは2週間後です。なお、一年間に5回まで受験できます。5回不合格となった方は一年間期間を空けなければなりません。

見事合格した方はおめでとうございます。他にも MCP 試験がありますので、AZ-900 (初級)から AZ-104: Microsoft Azure Administrator(中級)、そしてAZ-305: Microsoft Azure Infrastructure Solutions の設計(上級)を目指すなどスキルアップを考慮した資格試験が設定されています。

9.受験(受験後)にサポートが必要な方
次の URL をご覧ください。Microsoft ID が複数ある方が統合したい、英語、日本語以外で受験したい方、オンライン試験を受験したが監督官の態度に納得ができないなど、サポートが必要な方向けです。
https://learn.microsoft.com/ja-jp/certifications/help

まとめ

Microsoft Azureはクラウドコンピューティングの未来を築いており、それに参加するための最良の方法は、MCP資格の取得です。システムエンジニアの皆さん、Microsoft Learnを活用して知識とスキルを向上させ、MCP資格を取得する準備を始めましょう。これはあなたのキャリアにおける大きな一歩となることでしょう。そして、その成果はすぐに現れ、将来の成功に繋がることでしょう。

[著者プロフィール]

TD SYNNEX 株式会社 | 斉藤 之雄
アドバンスドソリューション部門 ソリューションビジネス開発本部 プリセールス&エンジニアリング部 マルチクラウドチーム (Azure Solutions Architect Expert, Azure DevOps Engineer Expert)

マイコン少年時代から関東電子(TD SYNNEX前身)を利用するなどソフトウェア、ハードウェアともに昔をよく知る。コンピューター業界は1996年から異種混在環境における再販ビジネスの技術営業からキャリアを開始し、特に導入支援や教育プログラムの立ち上げは定評を有する。国内大手電気通信事業者では社内クラウドコミュニティの主要メンバーとし全国SEへ対するリスキリングプログラム推進活動を実践した。2022年4月TD SYNNEX入社以来、CoE(センターオブエクセレンス)プロダクトの日本市場展開や AI/ML (人工知能/機械学習)サービスを中心とするプリセールス活動を行っている。愛猫家、社会福祉士でもある。

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