IBM Cloudとは?サービスの強みや特徴、他社製品との比較をわかりやすく解説

WatsonをはじめとするIBM独自の技術が利用できるクラウドサービスのIBM Cloud。本記事では、IBM Cloudのサービスの特徴やどのような強みがあるか、さらに他社製品との比較について解説します。

IBM Cloudに関しての知識を学びたい方や、これからクラウドサービスの導入を検討している方は、ぜひ参考にご覧ください。

IBM Cloudとは?

IBM Cloudとは、IBM社の提供するクラウドコンピューティングサービスです。米国のクラウド専門の調査会社Synergy Research Groupによると、2020年第4四半期のクラウドコンピューティングサービスのシェアは、全世界で第5位(約5%)でした。また、他社の順位は以下の通りです。

  • Amazon Web Services (AWS):約32%
  • Microsoft Azure:約20%
  • Google Cloud Platform (GCP):約9%
  • Alibaba Cloud:約6%

▼参考:クラウド市場シェア(ITmedia)

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2102/08/news056.html

クラウドコンピューティングサービスを利用すると、インターネットを通じてサーバーやネットワーク、ストレージやその他アプリケーションサービスの機能を享受することができます。さらに、クラウドコンピューティングサービスには以下の3つの形態があります。

  • IaaS(Infrastructure as a Service)
  • PaaS(Platform as a Service)
  • SaaS(Software as a Service)

この中で、IBM CloudはPaaS(Platform as a Service)とIaaS(Infrastructure as a Service)の2つを提供しています。

IBM Cloudの特徴について

IBM Cloudの料金体系は従量課金および一部の機能は無料、サブスクです。ライト・プランでは、IBM Watson® APIを含め40以上のサービスが無料で利用できます。自社システムの利用状況に応じて、柔軟な料金体系を選択できることが特徴です。

IBM Cloudでは、既存のオンプレミス環境との併用できます。オンプレミス環境とクラウド環境をそろえて、各社のシステムに最適な構成を選択することが可能です。

さらに、ベアメタルサーバー(クラウド上にある物理サーバー)が利用できることも大きな特徴と言えるでしょう。ベアメタルサーバーとは専用サーバーとも呼ばれ、「ユーザーが他のテナントと共有されない専用の物理マシンをレンタルすることができる」というクラウドサービスの形式の1つです。ベアメタルサーバーを利用することで、「高い処理能力」と「安定性」という物理サーバーのメリットを享受できます。

IBM Cloud導入企業の事例

では、IBM Cloudを導入した企業はどのような成果が出たのでしょうか。ここでは具体的に、導入企業の課題と成果について3つの事例をご紹介します。

大阪ガス株式会社の事例

課題:

大阪ガスでは、保全業務において書類や個別の管理ソフトを多数用いていました。そのため、各資料の間での連携が煩雑化し、さらに作業品質についても属人化する状況が継続。さらに、保全業務に関わる手続きや届出は非常に煩雑であり、経験の浅い担当者に対しては研修が必要であり、業務の効率が低下していたことも課題としてありました。

IBM Cloud導入の成果:

IBM Cloud導入により、保全業務は次のような成果を上げることができます。

・間接業務の負荷低減での、業務効率化の実現

・予算や工程などのデータがシステムに一元化され、関係者全員で活用できるようになることで、設備保全そのものの品質が向上する

・標準的なワークフローによって「誰でもできる化」を実現し、保全業務の属人化から脱却できる

ITシステムを導入していない業務であればあるほど、その効果は大きいと言えるでしょう。

▼参考: 大阪ガス株式会社の事例

https://www.ibm.com/jp-ja/case-studies/osakagas

株式会社ジャックスの事例

課題:

ジャックスは提携カードの種類が非常に多く、業務内容も複雑化しており、カスタマーセンターのマニュアルが膨大にあることが課題。さらに、マニュアルの煩雑化によるオペレーターの研修にも時間がかかっている状況でした。

IBM Cloud導入の成果:

カスタマーセンターのオペレーター業務に関するマニュアルを電子化し、膨大な数のマニュアルをIBM Cloud上で一元管理するようにしました。IBM Watson Explorerで日本語解析を行い、Similarity Searchにて類似文書検索を連携することで回答候補となる情報を自動表示。これによって、スピーディーなお客様対応が実現できました。結果として、問い合わせ対応の通話時間と保留時間が短縮。さらにマニュアルの電子化によって、オペレーターの研修期間が7カ月間から5カ月間に短縮されました。

▼参考: 株式会社ジャックスの事例

https://www.ibm.com/jp-ja/case-studies/jaccs

日本航空株式会社&株式会社JALインフォテックの事例

課題:

JALとJALインフォテックはビジネスのIT化を推進していたものの、デジタルシフトへの対応に遅れが目立っていました。また、JALグループの新たな価値を提供するため最新のテクノロジーを活用しながら上質な品質やセキュリティーが必要とされていました。

IBM Cloud導入の成果:

JALとJALインフォテックは、オンプレミスとパブリッククラウドの双方に同一の仮想化アーキテクチャーを展開。仮想マシンを停止させることなく、2つの環境間で自在に移動可能でシームレスな連携を実現し、品質とコスト・スピードのバランスを柔軟にコントロールできるようになりました。運用の自動化のレベルも向上し、工数の削減に役立っています。

▼参考:日本航空株式会社&株式会社JALインフォテックの事例

https://www.ibm.com/jp-ja/case-studies/jal-infotech

IBM Cloudの強みとは?

ここでは、IBM Cloudの強みについて詳しく解説します。IBM Cloudの主な強みは以下の4つです。

  • Microsoft、Google、AWSよりも低コストである
  • Watsonを用いたAIの運用・開発ができる
  • RPAによるデジタルプロセスの自動化ができる
  • ライブストリーミング配信や動画コンテンツの管理ができる

この4つの強みを自社システムに取り入れることができるかどうか、ぜひ意識しながらご覧ください。

Microsoft、Google、AWSよりも低コストである

米国Flexeraの調査結果によると、IBM CloudはMicrosoft、GoogleおよびAWSと比較し、67のクラウドコンピューティングシナリオの中で最低価格であると報告されています。さらに、IBMはこれまでにクラウドサービスの価格引き下げも実施しており、利用者も価格に満足しています。例えば、「IBMは競合他社よりも安価であり、ライブサポートチャットとデバッグは非常に役立っている」とのユーザーの声もあります。

▼参考:IBM Cloudは、比類のないコスト削減を実現します【IBM ソリューション ブログ】

https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/ibm-has-lowest-cloud-vendor-costs/

Watsonを用いたAIの運用・開発ができる

Watsonは、IBM社のAI(人工知能)です。Watsonを利用することで、自社ビジネスに役立つAIの運用・開発ができることが強みとなります。AIを業務に組み込んで活用することで、プロセスの効率化や新たな価値創造を実現できるでしょう。

Watsonのデータ分析によって、人が読み切れないほどの大量のデータの中からすばやく知見や洞察を見つけ出し、クライアントに対し質の高い対応も可能です。すでに、さまざまな業種でWatsonが活用されています。例えば、ANAではWatsonの音声認識機能(Watson Speech to Text)を利用して、コミュニケーターとお客様との会話内容のテキスト化を実現しました。これによって会話品質の向上に役立ちます。また、JR東日本ではWatsonを活用したオペレーター支援の仕組みを導入し、業務の効率化を実施しています。このように、Watsonを用いたAIの運用・開発によって、ビジネスを効率化することができるのです。

RPAによるデジタルプロセスの自動化ができる

IBMのRPA(Robotic Process Automation)を活用すると、単純かつ反復的な業務を自動化し、工数の削減ができることが強みです。例えばオムロン株式会社では約50の業務が自動化され、年間で1万5,000時間の工数削減を見込んでいます。また、株式会社荏原製作所では70万件に及ぶ紙の設計図面情報をデジタル化することで、製品の保守メンテナンスの効率化と新製品設計への再利用を実現することができました。このようにPPAを利用した、業務のデジタルプロセスの自動化によって、工数の大幅な削減も可能となります。

ライブストリーミング配信や動画コンテンツの管理ができる

外部の視聴者に向けたライブ配信や、オンデマンドのコンテンツ配信ができる、拡張性の高いクラウドオンライン動画プラットフォームを提供・管理できることが強みです。IBM Video Streamingという管理ツールを使用することで、管理者の設定や運用を容易に実現することができます。また、外部への動画配信のみならず、社内への動画配信網可能となり従業員のエンゲージメントを高めることも可能です。

IBM Cloudと他社クラウドサービスとの比較

IBM Cloudと同様のサービスを提供する、他社製品について解説します。他社製品についても知ることで、自社システムにはどのクラウドサービスが適しているのか判断する際のポイントになるでしょう。

Amazon Web Services(AWS)

Amazon Web Services(AWS)はAmazon.com社が提供するクラウドサービスで、競合他社の中ではもっとも長い歴史があります。2006年7月にサービスが提供され、シェアは3割を超えており業界トップです。そのため、クラウドサービスといえばAWSを想像する方も多いでしょう。サービスの種類も多く、最先端のIT技術が利用できることが特徴です。Amazon Web Services (AWS)は、以下の場合に向いていると言えます。

  • 市場シェアトップのサービスを使用したい
  • 機械学習やロボット工学、データ分析など最先端の技術を利用したい

Microsoft Azure

Azureは2010年にサービスを開始されたMicrosoft社が提供するクラウドサービスです。Microsoft社のサービスでもあることからMicrosoftの各種製品やWindowsサーバーとの親和性が高く、Microsoft利用者から支持されています。もしActive Directoryを既存の環境で使っている場合、Azure Active Directoryというサービスを併用することでハイブリッドクラウドを実現できます。Microsoft Azureは以下の場合に向いているでしょう。

  • Microsoft製品やWindowsサーバーを主に利用している
  • 導入予定のクラウドサービスと既存の社内システムとの連携や親和性を重視している

Google Cloud Platform(GCP)

Google Cloud Platform(GCP)はGoogle社が提供するクラウドサービスです。Google製品との相性も良く、日本の大手企業も多数導入しています。Google Cloud Platform (GCP)は以下の場合に向いているでしょう。

  • BigQueryなどを用いたデータ分析をしたい
  • 機械学習の機能をシステムに取り入れたい

Alibaba Cloud(アリババクラウド)

Alibaba Cloud(アリババクラウド)は2009年に設立されたクラウドサービスです。IaaSの分野では日本を含むアジア太平洋地域 No.1となり、ゲーム事業を行う企業に人気があります。Alibaba Cloud(アリババクラウド)は、以下のようなケースに向いています。

  • 中国をはじめとするアジア圏でビジネスを展開したい
  • ゲーム事業を行っている

まとめ

IBM Cloudは市場シェアこそ高くありませんが、低コストで利用できるとユーザーからの支持を得ています。価格を重視している場合、選択肢の一つに入れておくとよいでしょう。また、Watsonを用いたAIでシステム開発や運用をしたい場合や、RPAによるデジタルプロセスの自動化をしたい場合にはIBM Cloudは有用です。

どのクラウドコンピューティングサービスが適しているかは、各システムの構成や使用しているサービスによって異なります。重要なのは、自社システムの必要なニーズに適したサービスを選ぶこと。ここで解説した内容を参考に、IBM Cloudが自社にマッチしたものか、サービス選定の参考にしてください。

●IBM Cloudの詳細、導入についてはこちら
IBM Cloud導入なら|Watson活用事例・料金 | TD SYNNEX株式会社

▼参考
https://www.ibm.com/jp-ja/cloud/bare-metal-servers
https://www.ibm.com/jp-ja/cloud/pricing
https://www.ibm.com/cloud/blog/ibm-has-lowest-cloud-vendor-costs
https://www.ibm.com/cloud-computing/jp/ja/casestudy.html

[著者プロフィール]

中村陽平

8年間インフラエンジニアとして、システム開発から運用まで幅広く経験し、フリーランスとして独立する。IT技術に関する記事や転職、フリーランスに関する記事も多数執筆中。現在は官公庁系システムのネットワークの設計~構築・運用まで携わっている。得意分野はネットワークの設計、構築(Cisco機器)。

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