中小企業のクラウドサービス導入のメリットと注意点を徹底解説!導入事例も紹介

ここ数年、企業の労働環境が大きく変化してきています。政府により推進されている「働き方改革」や、新型コロナウィルスの影響により、オフィスに出社する勤務スタイルから、在宅勤務を主とする働き方が増加したことが主な理由です。労働環境の急激な変化により、企業のIT環境にも変化が求められ、リモートワークへの対応など環境整備が急務となっています。

クラウドサービスは、インターネット経由で提供されるものです。従来は各パソコンにアプリケーションをインストールすることや、ファイル共有、メールなどについても自社で環境を用意することが当たり前でした。しかし、オンライン上で提供されるサービスやアプリケーションの機能を使用することで、IT関連の運用負荷を下げたり、企業を取り巻く環境の変化へ柔軟に対応したりすることができます。労働環境の変化に伴い、大手企業だけではなく中小企業への普及が急速に進んでいるのです。

ここでは、クラウドサービス利用の現状やサービス導入のメリット、導入事例、注意点等をご紹介します。

中小企業のクラウドサービス利用の現状

クラウドサービスと言っても、実際に提供されるサービスは多様です。インターネット上のストレージにデータを保存・共有したり、メールやチャット、Web会議などオンラインでのコミュニケーションに使用したりするものが代表的なクラウドサービスの例となります。

クラウドサービスは多くの企業が利用しています。総務省が調査公表している「令和3年通信利用動向調査の結果」では、『クラウドサービスを利用している企業の割合は上昇傾向が続き、7割に達している。』と記されています。10年前の「平成24 年通信利用動向調査の結果」ではクラウドサービスを利用している企業の割合は28.2%と記載されていました。(参考:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html)
つまり、10年間で28.2%から70.4%へと大きく普及していることがわかります。

さらに「令和3年通信利用動向調査の結果」には、資本金規模別のクラウドサービスの利用状況も記載されています。これによれば、資本金規模別のクラウドサービス利用率は以下の通りです。

  • 50億円以上:96.5%
  • 10億円~50億円:94.8%
  • 5億円~10億円:87.7%
  • 1億円~5億円:82.4%
  • 5,000万円~1億円:70.7%
  • 3,000万円~5,000万円:64.5%
  • 1,000万円~3,000万円:60.6%
  • 1,000万円未満:48.1%

これを見ると、企業規模が小さくなるにつれてクラウドサービスの利用率も小さくなっていることがわかります。資本金1億円以上の企業は約80%と普及していることに比べて、資本金1万円未満の中小企業では約40%と利用状況に開きがあるのが現状です。一方、クラウドサービスを利用した効果について「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と答えた企業の割合が88.2%と、ほとんどの企業で導入後の効果を実感しています。

中小企業がクラウドサービスを導入するメリット

クラウドサービスを導入するメリットにはどのようなものがあるか、代表的なものを挙げてご紹介します。

1)オンプレミス環境よりも運用コストが削減される
クラウドサービスの利用には毎月のサービス料を支払う必要があり、このコストは企業が導入を躊躇する理由の一つにもなっています。クラウドサービスを利用していない企業の多くは、自社内に機器を設置し運用を行う「オンプレミス環境」が主流です。しかし、オンプレミス環境を運用する人員を常に確保する必要があり、将来の利用計画により必要容量以上に資源を用意しないといけない場合もあります。一方、クラウドサービス利用は運用をクラウド事業者に任せることが可能です。また、必要なときに必要なだけ資源を使えるため、オンプレミス環境よりもコストを減らせるというメリットがあります。

2)スピーディーにリモートワーク環境構築ができる
ここ数年、リモートワークを実施する企業が増えています。前述の「令和3年通信利用動向調査の結果」では、6割近くの企業がリモートワークを導入しています。3年前の同内容の調査時には3割程度だったので、導入企業は倍になっています。

企業がオンプレミス環境でリモートワークに対応した環境を実現するためには、運用上のセキュリティリスクや技術的課題をクリアする必要があり、簡単ではありません。しかし、クラウドサービスなら物理的に環境を用意する必要がないので、スピーディーに運用体制を整備し、利用を開始できるというメリットがあります。

3)コストを見える化しやすい
すべてのクラウド事業者では、プラン別に料金が設定されています。その内容を十分に確認し、サービス内容を把握することで、コストを最適化できるでしょう。プラン以上のコストは基本的に発生しないため、コストが見えやすくなります。

中小企業に導入されるクラウドサービスの種類

クラウドサービスはサービス内容のみならず、その提供形態もさまざまです。提供形態の違いを理解して、必要なサービスを選択する必要があります。

1)IaaS
サーバの物理的な環境から、ネットワークなどOSを稼働させる環境をクラウド事業社で提供するサービスです。OS構築から利用者側が行う必要があります。OSの構成変更など比較的自由に設定できることから、オンプレミス環境に近いクラウドサービスです。

2)PaaS
サーバの物理的な環境から、OSを稼働させる環境(CPU、メモリ、ディスク)までをクラウド事業社で提供するサービスです。ミドルウェアの導入やアプリケーションを稼働させる設定などは、利用者側が行う必要があります。

3)SaaS
特定のアプリケーションをサービスとして提供するものです。企業側の運用は提供されたサービスの利用と管理が主となるため、運用負荷はかなり少ないでしょう。

クラウドサービスの特長やメリットなど、詳細についてはこちらで解説しています。
https://blog.synnex.co.jp/cloud/what-is-microsoft-azure/

クラウドサービス導入事例の紹介

前述の通り、クラウドサービスを利用している9割近くの企業が「導入後効果があった」と回答しています。とはいえ、ただサービスを導入しただけでは「効果があった」と実感するまでには至らないでしょう。効果のあったクラウドサービスの導入事例は、3つの段階を踏んでいるパターンが見受けられます。

1)社内業務の効率化
社内の確認事項や書類を紙で管理する業務や、顧客との情報のやり取りを手入力する業務が複数存在する場合、クラウドサービスの利用で業務効率化を図ることができます。

2)社内の見える化
クラウドサービスの導入で、これまで各個人のPCの中にあった情報がクラウドサービス上に集まるようになります。その結果、これまで簡単にできなかった個人のノウハウや業務手順書の共有も可能になります。または、在庫情報など業務に関係する情報を担当者以外の社員も知ることができ、人によってばらつきのある、業務の無駄を見つけることができます。

3)ビジネスモデルの変革
自社独自の仕組みをソリューションとして展開したい場合、それらの仕組みを提供する環境を最初から準備するのは、コスト的にも人員的にも厳しい企業が多いはずです。しかし、クラウド上に環境構築したものを利用者に提供する形式にすれば、比較的簡単にソリューション展開が可能になります。

▼参考
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd133230.html

中小企業におすすめのクラウドサービス

クラウド利用は興味があるものの、複数のクラウド事業者から選択するのが難しいと感じる企業は多いでしょう。特に中小企業の場合、IT専門の担当が配置されていないこともあるので、なおさら難しいかもしれません。そこで、中小企業におすすめのサービスをいくつかご紹介します。

1)Google Workspace
GmailやGoogleドライブなど、プライベートでも使用している人が多いクラウドサービスのビジネス版です。メール(法人ドメインも可)、カレンダー(日程共有)、Meet(WEB会議)、Chat(コミュニケーションツール)、ドライブ(ファイル共有)、ドキュメント・スプレッドシート(文書作成)など、たくさんのツールやサービスから構成されています。利用者が非常に多く、インターネット上にも情報が多いので、困ったときにも解決策が見つかりやすいでしょう。

2)Microsoft 365
Microsoftが提供するサービスです。ExcelやWordなどのOfficeアプリケーションやTeams(WEB会議、チャット)など、さまざまなアプリケーションとサービスで構成されています。Google Workspaceに比べ、料金プランが複数あり、プランごとにサービスに含まれる内容が大きく異なるので、自社に合ったプランの確認・検討が大切です。

3)おてがるコワークドライブ
TDシネックスとNTT東日本が協業して提供するサービスです。前述のGoogle WorkspaceやMicrosoft365と違い、クラウドストレージに特化したサービスです。社内外のファイル共有が簡単にでき、アップロードやダウンロード時にメッセージを送信できるなど、簡単に使用開始できます。
おてがるコワークドライブについては下記で詳しくご紹介をしています。
https://www.synnex.co.jp/solution/otegaru/co-work/

クラウドサービス導入時の注意点と対策

クラウドサービスは便利であり、業務効率化やコスト削減につなげることができますが、サービスの仕様を理解し、適切な範囲で使用することが必要です。ここで、クラウドサービス利用時の注意点と対策を3点解説します。

1)事業者と利用者の責任範囲を把握しておく
クラウドサービスは、クラウド事業者に任せておけばすべて大丈夫というものではありません。サービス導入後のセキュリティ事故やデータ損失など、利用者側の責による障害については保証も対応もありません。クラウドサービス事業者側ではサービス提供形態(IaaSやPaaS、SaaSなど)により、クラウド事業者とサービス利用者の責任範囲が明確に定義されています。あらかじめ、しっかりと確認・把握しておくことが大切です。また、クラウド事業者自信の障害を想定し、自社のデータを外部に保管や、複数世代の保管といった独自の検討も必要でしょう。

2)データ、アカウントの利用量の増加による料金の増加
クラウドサービスの多くは、ユーザー毎の月額料金や使用量による従量課金制となっています。一見安価に思えても、全社員一律で同じサービスを利用する場合には、使用人数や使用容量に課金されてしまうので注意しましょう。直近の使用予測とともに、サービス使用料がどのように推移するか計画を立てる必要があります。

3)独自カスタマイズの範囲に制約がかかる
サービス間のデータ連動など、自社内に設置しているシステムであれば使用できていたことが、クラウドサービスでは実現できない場合があります。さまざまな利用者がいるクラウドサービスでは、特定の顧客にだけ特別にサービスを改変して提供するということは基本的にありません。クラウドサービスを業務に合わせるのではなく、業務をクラウドサービスに合わせる必要があります。

まとめ

リモートワークが拡大し、在宅勤務も日常的になりつつあります。紙媒体を使用した業務やオフィスへの出社を必須とした働き方は、過去のものとも言えるでしょう。その流れの中、クラウドサービスの利用はここ最近急速に広がりを見せ、大企業では80%を超えてきました。一方、中小企業に目を向けるとまだ60%程と、これから先まだまだ導入企業拡大の傾向は続く見込みです。社内業務の見える化・効率化や変化への迅速な対応、あるいはコストの最適化など、導入による効果を感じている企業は非常に多く見られます。こうした点にメリットを感じられるなら、このタイミングで導入を検討してみてはいかがでしょうか。

TDシネックスではクラウド導入について、多彩なサービスメニューをご用意しています。クラウド導入についてご興味があれば、TDシネックスまでご相談ください。

https://www.synnex.co.jp/vendor/google/google-workspace-endurser
https://www.synnex.co.jp/vendor/microsoft/microsoft365/
https://www.synnex.co.jp/solution/otegaru/co-work/

[筆者プロフィール]
おじかの しげ
https://twitter.com/shige_it_coach
東京近郊の中堅SIerに20年勤務する、インフラ系システムエンジニア。インフラ環境構築からOS、ミドル導入、構築、運用。最近はインフラ関係だけではなく、WEBアプリ開発など幅広く業務を経験。

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